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2024.05.20

医療者向け企画

やるじゃん!心不全チーム医療!

こんにちは、循環器内科の笹本です。
研修医を卒業して早7年、まさかブログを書かされることになろうとは思っていませんでしたが(笑)、循環器内科の若手ということで、以前ここでも宣伝していた2023年9月に行われた循環器懇話会の報告をしようと思います。

少し長い投稿になりますので、興味のあるところだけでも読んでいただけたらと思います。

循環器懇話会ってなに?

正式には「全日本民医連循環器懇話会」。全国の循環器関連の診療科で働く医師や看護師、セラピストや放射線技師などさまざまな職種が集う、民医連版の循環器学会みたいなイベントです。

コロナ以前は毎年各県持ち回りで開催され、夜は各地の美味しいご飯やお酒をわいわい楽しむ企画だったのですが、コロナ禍で4年間休止。ようやく再開した今年は山梨主幹のオンライン開催になりました。
それでも16道府県から115人が参加し、色んな報告が持ち寄られた熱い会になったと思います。

やるじゃん!心不全チーム医療!~アフターコロナの新時代~

↑が今年の開催テーマです。
日本では高齢社会に伴い、心不全が増加傾向です。2030年には心不全患者が全国で130万人に達すると推定され、100人に1人が心不全になる「心不全パンデミック」が起こるとされています。


すでにパンデミックになっている地域もある中で、心不全の再入院率をいかに低下させるかが、とても重要なミッションです。
全国の仲間たちも多職種連携や在宅・地域連携の強化など、さまざまな工夫を図っていました。
(いくつか抜粋)
・心不全チーム立ち上げ + 毎週多職種カンファレンス → 在院日数や再入院率が低下(宮城
・「心不全早期発見プロジェクト」 チェックリストを作成・数値化し、点数によって紹介するシステムを構築(群馬
・退院後、利尿剤増量や静注投与の体重の目安を共有し、それにより再入院を予防(福岡

山梨からは3つの報告

主催県の私たちは指定報告を担当。看護師の新田師長、セラピストの前嶋さんと太田さん、医師は私から報告しました。

右から新田さん、前嶋さん、太田さん、笹本

新田師長のテーマは「タブレットを活用した心不全チーム教育」。

循環器患者さんへの教育を多職種で共同して行っていること、
心不全療養指導士を含む心不全チームを立ち上げ、心不全教育にタブレットでの動画教育を行うことを計画していることを報告。作成中の動画の一部も公開しました。

発表中の新田さん

前嶋さんと太田さんのテーマは、「当院心臓リハビリテーションにおける活動報告」。
太田さんは経済的・社会的な困難を抱え、入退院を繰り返す患者さんの事例を報告。

質疑を受ける太田さん

多職種で協力し、失業保険などの制度活用や、残薬確認、無断キャンセル時の電話掛けなどを行ったことで、繰り返す入退院の頻度が介入前の1/3に減ったとのことでした。
前嶋さんは、心リハ利用患者さんの退院後1年以内の再入院に、社会参加の有無が関連しているのかを調査。研究の結果、P値<0.01と社会参加の有無が再入院に影響していることが示唆されたと報告しました。

発表する前嶋さん

社会参加が心不全の再入院に影響するとは・・・!興味深い統計で、今後の診療に役立てたいです!

笹本は「ノルアドレナリン依存の心不全末期患者をどうやって自宅に帰すか?」のテーマで発表。


本人の希望である在宅への退院を実現するため、病院・在宅スタッフ双方で準備・検討を開始。厚生労働省に在宅でのノルアドレナリン使用の可否を問い合わせ(この時点では在宅では使用できない薬剤とされており薬剤費は病院持ち)、他院で訪問診療をしている先輩ドクターたちにもアドバイスをもらいながら、短期の在宅診療を実現できたことを報告しました。

その人らしいLIFEにこだわる

特別講演では弓野大先生(ゆみのハートクリニック理事長)より、「心不全在宅管理の5つのポイント」のテーマで最先端の在宅管理についてご講演いただきました。

講演中の弓野先生

いろいろ目からウロコの心不全在宅診療・処方の「コツ」を教えていただき、メモする手が止まりませんでした。
患者さんに寄り添うのはもちろんのこと、デジタル心不全手帳や多職種と情報を共有できるアプリの活用など、DX化した在宅診療を行っており早期に心不全増悪に気がつき治療につながるなど技術・効率面でも最先端でした。入院~外来~在宅で活かせる内容が盛り沢山だったので、今後の診療に活かし、循環器医療の質を向上させていきたいと思います。

関連して、弓野先生などによる長年の厚生労働省への働きかけにより、2024年診療報酬改定において、在宅静注強心薬持続投与が保険承認されました(パチパチ)!!いろいろな制約はあるものの、心不全末期患者さんに寄り添える手段が増えたことは嬉しいことです。弓野先生ありがとうございます。

来年は青森!

山梨開催の時点ではまだ新型コロナへの対応に追われる日々でしたが、実行委員長の車谷先生を筆頭に実行委員メンバーで何とかやりきれました。

挨拶中の車谷先生

山梨会場

2024年は青森で現地開催されることが発表されたので、今度は直に顔を合わせながら学んで交流できます。新たな学びと、(飲み会🍻含めた)交流、楽しみです!

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