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2024.06.16

研修医ブログ

家庭医とポートフォリオ

#専攻医

お久しぶりです。1年ぶりくらいの投稿をしている山中です。

この前の3月で総合診療専門研修が修了しました。そこから専門医試験の申込まで色々あった気がしますが…、何とか無事申し込みできたので、晴れて「総合診療研修を終えた」と言える立場になりました。

後期研修卒業式というのもやってもらいました

先日、同期の林が総合診療専門研修について書いていたので、私はその大きな特徴であるポートフォリオについて書いてみます。
総合診療、家庭医療に興味のある方の参考になればと思います。

ポートフォリオとは

1年前に投稿したブログでも簡単に書きましたが、ポートフォリオの元々の意味は「書類の束・書類入れ」といったもので、色々な分野で若干違ったニュアンスで用いられています。

たとえば、クリエイティブな分野では、発表者のコンセプトを表現した作品集を指したりします。
医師研修ではカルテ記録、退院サマリー、読んだ論文や資料、自作のプレゼンテーション資料、振り返りの記録などがそれに当たります。

総合診療・家庭医療専門研修では、こうした膨大な記録から複数の学習目標に沿って、それぞれA4用紙2枚程度に要約したものを提出課題とされ、これがブログ上で何度か紹介されてきた「ポートフォリオ」です。

専門研修の提出課題

たとえば内科専門研修などで提出を求められる課題は、治療経過や先行研究の結果に照らした考察などを行ったレポートです。

当院で行っている医局カンファレンスも基本は症例発表=レポート報告です

レポートは「どんな症状があって、どういう部分に着目して、検査・診断をして、こういう治療をして、こういう経過を辿って、こんな結果になった」という内容をまとめます。
ざっくり言うと、病気への対応をまとめるものです。

一方、総合診療・家庭医療の研修で提出を求められるのは、自分自身の診療を振り返ることに重点を置いて報告するポートフォリオです。実践とその振り返り、ネクストステップの内容が評価されます。

ポートフォリオも病気の対応については触れるのですが、単なるレポートとは異なり、作成者(自分)の葛藤とか試行錯誤の過程も記載します。当時の自身の心理状態や思考を振り返って、「こうすればもっと上手くいったかも」などのネクストステップも考えます。
患者さんやご家族、他職種、地域資源との関わり方やその戦略の立て方も重要になってきます。

医療は試行錯誤の連続であり、それらを振り返り、得られる教訓を考え、次の学びのステップに繋げるという「省察的実践」が重要と言われます。

ポートフォリオを作成するということは、自分なりの工夫を振り返って言語化し、それを指導者と振り返ることで次の学習戦略を立てるということであり、これは「省察的実践を身に付ける訓練」といえます。
そうした意味で総合診療・家庭医療の研修評価ではポートフォリオの提出が必要とされているようです。

ポートフォリオや家庭医療の考え方などがどんなものか、気になる方はこちらの書籍がオススメです

これで前編は終了。固くなっちゃってすいません。後編ではポートフォリオ発表会と山中のポートフォリオ、家庭医合宿について柔らかくお届けしたいと思います。

よければ後編も読んでいただけるとありがたいです。

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